韓国の営業秘密保護:成立要件・社内管理・民事・刑事救済
韓国で営業秘密として保護される情報は、公然と知られておらず、独立した経済的価値を持ち、秘密として管理されている必要がある。製造条件、ソースコード、設計、配合、顧客・価格情報、研究結果、失敗データなども、この三要件を満たす限り対象となる。登録手続はないため、紛争時には権利者自身が情報の内容と管理状況を立証する。

保護対象の特定
「当社技術」や「顧客情報一式」といった抽象的な表現では、保護範囲と不正使用の対象を判断しにくい。営業秘密は、対象文書、ソースコードのモジュール、工程パラメータ、データ項目又はそれらの組合せとして具体化する。公開情報、従業員の一般的な技能、独自に開発された情報と区別し、秘密であることによって生じる経済的価値も整理する。
秘密管理の実務
秘密管理性は、規程の有無だけでなく、情報の価値と業務環境に応じた実際の運用から判断される。重要情報を分類し、アクセス権限、技術的制御、契約、教育及び退職時措置を対応させる。
- 営業秘密の範囲、管理責任者及び取扱手順を文書化する。
- 職務上必要な者にアクセスを限定し、認証、ログ、ダウンロード制限及び端末管理を実施する。
- ファイルやシステムに秘密表示を付し、管理された保存先を使用する。
- 従業員、委託先、共同研究先との契約で秘密保持義務と利用目的を定める。
- 入社、異動、退職の各段階で権限を更新し、退職時には情報の返却・削除とアカウント停止を記録する。
- 教育、監査及びインシデント対応の実施記録を保存する。
すべての資料に同じ統制を適用する必要はない。情報を重要度で分類し、重要な情報ほど強い管理を適用した方が、事業上も立証上も合理的である。
漏えい発生時の初動
- アクセスログ、電子メール、クラウド記録及び対象端末を保全する。
- 証拠へのアクセスを制限し、改変や削除を防止する。
- 法務、情報セキュリティ及び事業部門の担当者を限定して事実調査を行う。
- 対象情報、取得経路、使用又は開示の状況、受領者及び予想損害を特定する。
- 差止め、証拠保全、損害賠償、刑事告訴及び労務対応の順序を検討する。
個人アカウントへの無断アクセスや私物端末の確保は、プライバシー、労務及び刑事上の問題を生じさせる。調査方法の法的根拠を確認し、原本性と保管経路を記録する。
民事救済
不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律は、侵害又は侵害のおそれに対する差止め、侵害物の廃棄・除去、損害賠償及び信用回復措置を定めている。故意の営業秘密侵害については、裁判所が認定損害額の5倍を上限とする賠償を命じることができる。この5倍賠償は2024年8月21日に施行された制度であり、故意性、侵害の程度その他の事情を踏まえて裁判所が判断する。
訴訟では、保護を求める情報を特定しながら、その内容が手続を通じてさらに公開されないよう、閲覧・提出方法や秘密保持措置を併せて検討する。
刑事責任
営業秘密を国外で使用し、又は国外使用の目的で取得・使用・漏えいした場合は、原則として15年以下の懲役又は15億ウォン以下の罰金の対象となる。国内での取得・使用・漏えいは、原則として10年以下の懲役又は5億ウォン以下の罰金の対象となる。犯罪による利益額に応じた罰金規定もある。故意に営業秘密を毀損・削除して権利者の使用を妨げる行為についても、2024年改正で刑事処罰が強化された。
刑事手続を選択すると、捜査機関による証拠収集が可能になる一方、手続の時期や処分を権利者が全面的に管理することはできない。告訴前に対象情報、秘密管理、取得経路、使用先及び国外移転の証拠を整理する必要がある。
人材移動と国際的な情報共有
海外本社の規程やNDAを韓国子会社に適用するだけでは、韓国での管理実態を十分に示せない場合がある。親会社情報を受領する部署、利用目的、保存先、アクセス権限及び返却・削除手順を韓国の運用に反映する。退職者対応では、特定の営業秘密の返却と使用禁止を明確にし、一般的な経験・技能まで制限しない。競業避止義務の有効性は、営業秘密保護とは別に検討する。
特許との使い分け
特許は発明を公開する代わりに、独自開発に対しても一定期間排他的権利を及ぼす。営業秘密は秘密が維持される限り保護されるが、適法なリバースエンジニアリングや独自開発を排除しない。製品から解析しやすい技術や第三者が独自に到達しやすい技術は特許、社内工程や学習データなど長期間秘匿できる情報は営業秘密として管理する。単一製品について両制度を併用することもできる。
公式資料
- 知識財産処の営業秘密保護制度
- 不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(英訳)
- 営業秘密侵害の損害賠償・刑事罰に関する知識財産処資料
- 2024年8月施行の懲罰的損害賠償・営業秘密毀損罪に関する知識財産処資料
法務・編集レビュー:2026年7月20日。本記事は一般的な制度情報であり、個別事案に対する法的助言ではない。