投資家は、単に技術が良いからといって投資するわけではありません。その技術が会社に帰属するか、競合他社が容易に模倣できないか、主要な人材が離職しても権利が会社に残るか、外部の権利を侵害していないかなどを検証します。このプロセスで最も頻繁に検討されるのが知的財産です。
シード期のスタートアップは、IPデューデリジェンスが大企業のM&Aのためだけのものだと誤解していることがよくあります。しかし、シード、プレA、シリーズAの段階でも、投資家は最小限のIPリスクを求めています。特にAI、SaaS、ヘルスケア、製造、ロボティクス、半導体、バッテリー、コンテンツ、プラットフォーム企業にとって、IPの整備は投資のスピードと条件に直接影響を与える可能性があります。
投資を募る前に、以下の7つのポイントをまず確認すべきです。

まず確認すべきは権利の帰属です。誰がその技術を創造したのか、そしてその権利が会社に譲渡されているかを確認することが重要です。
デューデリジェンスで頻繁に問題となる状況は以下の通りです。
投資家は、技術の優劣よりも「この技術を会社が売れるのか?」という点をまず見ています。そのため、会社設立前の開発、外部委託成果物、共同開発成果物については、別途譲渡契約書や確認書を準備しておくことが望ましいです。
特許の数が多いからといって、必ずしも良いポートフォリオとは限りません。投資家は、特許が実際のビジネスと連動しているかを見ています。
確認すべきポイント:
投資家は、単に「特許がある」という事実よりも、「その特許が収益や防御力にどう貢献するのか?」という点に強い関心を持っています。そのため、単なる特許リストではなく、製品機能と特許請求の範囲を結びつけたマッピング表を投資資料に含めることが望ましいです。
技術系企業であっても、商標を軽視すべきではありません。製品名、サービス名、アプリ名、プラットフォーム名などが既にマーケティングで使われているにもかかわらず商標出願がなされていない場合や、類似商標が既に存在する場合、リブランディング費用が発生する可能性があります。
デューデリジェンスで検討される質問:
商標は特許よりも早く事業リスクとなる可能性があります。投資後の多額の広告費を投じる前に、ブランドの権利関係を整理しておくべきです。
SaaSやAI企業にとって、オープンソースの利用履歴はデューデリジェンスの中心的な検討事項です。投資家が直接ソースコード全体をレビューしなくても、利用しているオープンソースコンポーネントのリスト、ライセンス、通知義務、そして強力なコピーレフトライセンスの利用状況などを検証することができます。
特に、以下は高リスクシグナルです。
投資前には、最低限、製品ごとのオープンソースリストとライセンス分類表を作成しておくべきです。
全ての技術が特許化できるわけではありません。データセット、レシピ、製造条件、顧客固有のチューニング値、価格ロジック、ラベリング基準、実験失敗データなどは、営業秘密として管理する方が良い場合があります。
しかし、営業秘密は「秘密だ」と考えているだけでは保護されません。実質的な管理措置が講じられている必要があります。
チェックリスト項目:
投資家は、会社がどれだけ優れた技術を開発したかだけでなく、その技術を失わないための体制が整っているかを見ています。
特許を保有しているからといって、製品を自由に販売できるわけではありません。会社の特許は「他者の模倣を阻止する権利」である一方、FTO(Freedom-to-Operate)は「他者の権利を侵害せずに事業を遂行できるか」を判断するための検討です。
投資前に、以下の点をチェックすべきです。
特に製造業、医療機器、ロボティクス、バッテリー、半導体装置、通信、セキュリティ分野では、FTOレビューが投資デューデリジェンスにおいて極めて重要になることがあります。
IPは単なるコスト項目ではなく、資金調達や事業化の基盤となり得ます。WIPOも、知的財産や無形資産が企業の資金調達において重要性を増していると説明しています。しかし、IPが資金調達に活用されるためには、その権利状況、事業との関連性、市場性、実施可能性、ライセンスの可能性などが整理されている必要があります。
投資家の視点から見て、優れたIP資料は以下のことを示します。
単なる特許リストよりも、製品、技術、権利、市場を結びつけた表の方がはるかに説得力があります。
投資デューデリジェンスに備え、以下の資料をフォルダにまとめて準備しておくことが望ましいです。
必ずしも登録されている必要はありません。しかし、コア技術について少なくとも出願がなされているか、公開前に出願されているか、そして請求項が製品と連動しているかが重要です。シード期の企業にとっては、登録よりも出願時期や権利の方向性の方が重要視されることが多いです。
技術系企業にとっては不利になる可能性があります。しかし、全ての企業が特許中心である必要はありません。データ、ブランド、営業秘密、ソフトウェア著作権、契約上の排他的権利などを重視するビジネスもあります。重要なのは、「なぜ特許がないのか、その代わりに何で防御しているのか」を説明できることです。
権利の帰属が不明確な場合です。外部委託会社が作成したコアコード、共同創業者の個人名義の特許、前職の技術との混同、大学の研究成果の無断利用などは、取引を遅らせたり、条件を悪化させたりする可能性があります。
投資を準備するスタートアップは、特許出願状況だけでなく、権利帰属、営業秘密、オープンソース、商標、FTO、契約などを整理しておくべきです。投資直前にIPデューデリジェンスを急ぐと、手遅れになる問題が浮上する可能性があります。
Pine IP Firmは、投資前のIPチェック、特許ポートフォリオ診断、製品別権利マッピング、オープンソース・外部委託契約リスクレビューを通じて、投資家の質問に答えられる資料を整理します。